D.NAタイピング検査

A. PCR-RFLPD
B. PCR-SSP
C. PCR-SSO
D. PCR-SSCP
E. 直接塩基配列決定法
F. RT-PCR (reversetranscriptase-PCR)
G. 試薬


A. PCR-RFLP (restriction fragment length polymorphism)
 PCR産物の中に遺伝子変異部を認識する制限酵素が存在する場合,共通配列部位にプライマーを設定し,その内側,すなわち,PCR産物内に多型性をもたせて増幅する.例えば,ABO血液型でA型とB型を区別する場合,通常のPCR法は,増幅されるDNA断片内にA型とB型とで区別できる配列を含むようにA型とB型とに共通な部位にプライマーを置き,PCR増幅を行う.変異配列を認識する制限酵素で消化すると患者のDNAは切断され,電気泳動後,低分子の断片として検出される.それに対し,正常人のDNAは切断されないのでそのままの大きさで検出される.キャリアーの場合(ヘテロ接合)には,切断された断片と切断されない断片が観察される.また,正常のDNAにしか制限酵素認識部位がない場合には,まったく逆になる.しかし,両方のDNAに認識部位が存在しているのであれば,2種類の酵素を用いて診断した方が信頼性が増す.制限酵素は失活しやすいので冷凍庫から出したら,氷冷し,使用後は速やかに戻すことが必要である.また,バッファーの塩濃度が酵素活性を左右させるので,メーカーから添付される至適バッファーを使用するようにする.


B. PCR-SSP(sequence specific primers)
 PCR-SSP法は,ある特定の配列をもったDNA部位だけをPCR法で増幅する方法である.例えば,A型とB型とで塩基配列の異なった部位にプライマーを設定し,PCRを行う.A型用のプライマーはA型のみを,B型のプライマーはB型のみをそれぞれ増幅するので,何れのプライマーで増幅されたかをゲル電気泳動で検出すれば,簡単にタイプが判定できる. PCR-SSPを行う場合,プライマーをどの位置に設定するかということが重要なポイントになってくる.プライマーは3'末端部位に検出したい配列がくるように設計する.PCR-SSP法は3'末端が全く同じプライマーであれば,PCR増幅が行われるが,3'末端が異なっていると,その部位でプライマーが相補結合ができないので,宙づりのような状態になる.このような場合,DNAポリメラーゼは,DNA合成ができないため,増幅像が検出されない,という原理に基づいて,遺伝子型・配列を決定する.
 この方法は,PCR増幅後,ゲル電気泳動すれば簡単に判定できるが,適切なプライマーの設計や温度・時間などの条件設定が難しいという短所がある.


C. PCR-SSO (sequence specific oligonucleotide)
 PCR-SSOは正常部位と変異部位に対する合成プローブoligonucleotideprobeをフィルターにドットされた(マイクロプレートを用いることもある)PCR産物とハイブリダイズさせて,変異の有無を検出する方法である.また,逆にプローブをドットし,PCR産物をハイブリダイズするリバースドットブロットreversedotblot法もある.抗原抗体反応に例えると,DNAが抗原で変異部位に対する特異的抗体と正常部位に特異的な抗体とを作用させて,何れの抗体と結合したかを観察する方法である.従来この方法の検出には,放射性同位元素が使用されていたが,使用施設の制約などから化学発光や発色などによって検出されるようになってきている.この方法は,臨床検査分野においてHCVや結核菌の同定などに応用されている.


D. PCR-SSCP (single-strand conformation polymorphism)
 PCR増幅された2本鎖DNA断片をゲル電気泳動で分離した場合,その移動度はDNA分子の大きさに比例する.1本鎖DNA分子は,変性剤を含むゲルで泳動した場合は,その分子の大きさに比例するが,変性剤を含まないゲルで泳動した場合,1本鎖DNAは分子内相互作用によって折り畳まれ構造(高次構造)を形成する.このように立体構造を形成したDNAは,その構造の相違に依存してゲル電気泳動の移動度が変化する.すなわち,PCR-SSCPの方法は,PCR増幅した2本鎖DNA(通常200〜300bpのDNA断片が最も適している)を熱やアルカリで処理して変性させ,1本鎖にした後,変性剤を含まないポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけると,ゲル中で1本鎖DNAは分子内相互作用により折り畳まれ,高次構造を形成する.その折り畳まれ構造の相互作用は,塩基の相違であっても変化する.その差違は,泳動されたDNA断片を染色することによって検出される.通常,DNAの検出に広く利用されているエチジウムブロマイドは,2本鎖DNAを染色するが,1本鎖DNAをほとんど染色しない.そのため,この方法の染色には銀染色が応用されている.現在ファルマシア,バイオラッド,第一化学などから染色キットが発売されている.蛍光色素でプライマーを標識しておくと,オートシーケンサーが利用できる.  RIを利用したオートラジオグラフィーで検出する方法もあるが,施設の制約,RIの半減期や被曝などの問題がある.銀染色法は感度的にはRIに劣るが,操作が簡単で,使用場所も限定されないし,コストが安いなどの利点がある.染色操作も1時間程度で終了するので,RIよりも短時間で結果が得られる.


E. 直接塩基配列決定法 (direct sequencing)
 直接塩基配列決定法は,PCR増幅したDNA鎖を鋳型として,ベクターにサブクローニングなどを行なわないで,直接塩基配列を決定する方法である.この方法は,PCRの欠点である読み違い(miscorporation) を解消できる.PCRでの読み違いは400bpに1つの割合で起こるといわれており,サブクローニングした後では,400塩基に1つの割合で塩基変異が検出されるはずである.ランダムに導入された誤った塩基配列は,平均1/400に希釈されるので,直接塩基配列決定法ではほとんど無視することができる.
 この方法は,PCR増幅したDNA鎖を非対称PCRと呼ばれる二次PCRを行ない一本鎖DNA増幅して,一般的にはジデオキシ法を用いて塩基配列を決定する.この二次PCRは,一組のプライマーの一方を制限量にして(通常は1:10〜1:100)PCRを行なうことによって一本鎖DNAを増幅する.最近ではサイクルシーケンス法が応用されるようになり,より簡単にシーケンス反応が行えるようになってきている.


F. RT-PCR (reversetranscriptase-PCR)
 この方法は,第1ステップとして,mRNAを鋳型として結合したプライマーの3ユ末端から逆転写酵素(reverse transcriptase; RT)の作用によりcDNAを合成する.ここで使用されるプライマーにはmRNAの3ユ末端領域のポリAに相補的なTが十数個並んだオリゴdTプライマーoligo(dT) primer,塩基がランダムに数個並んだランダムプライマーrandomprimerや目的とする遺伝子のmRNAにのみ結合する特異的プライマーspecificprimerなどがある.それぞれ目的に応じて使い分けられている.第2ステップとして,今度は合成されたcDNAを鋳型にして通常のPCRを実施する.ここで得られたPCR産物を上記の方法などで解析し,診断する.細菌感染を証明する場合,末梢などに存在する細菌は非常に少ないので,直接DNAをPCRにかけても増幅されないことがある.しかし,細菌にはその菌特有なrRNAがたくさん細胞内に存在しているので,これを鋳型にしてRT-PCRを行うことで,同定することができる.また,レトロウイルスのようなRNAウイルスでは直接PCRが実施できないので,RT-PCRを用いて証明する.調べたい遺伝子に偽遺伝子pseudogeneが存在する場合,直接PCRを行うと,偽遺伝子も増幅されてしまうことがある.このような場合には,偽遺伝子からはmRNAが転写されてこないので,RT-PCRを利用する.
 従来mRNAの証明にはノーザンブロットが利用されていたが,RT-PCRを応用することで簡単にmRNAの発現を証明できるようになった.


G. 試薬
PDFを参照(準備中)